介護施設の夜間の見守り、少ない人数で気づける仕組みのつくり方

介護施設の夜間の見守りを少ない人数で回すなら、センサーの数を増やす前に決めることがあります。知らせが「どこで鳴り、誰が受け、その人が出られなかったら次に誰へ回るか」です。
夜勤の職員は、夜のかなりの時間を居室の中で過ごします。排せつの介助、体位の交換、眠れない方への付き添い。そのあいだにステーションの表示盤が光っても、見る人がいません。夜の取りこぼしは、センサーが反応しなかったときより、反応した知らせを受け取れる人がいなかったときに起きやすいものです。
順番さえ決まっていれば、出入口1か所のセンサーでも仕組みとしては動きます。台数を増やすのは、そのあとで間に合います。
午前2時、知らせはどこで鳴っていたか
夜勤2人の小さな施設を例にします。
午前2時。ひとりは居室で排せつの介助をしていて、手が離せません。もうひとりは仮眠の時間です。そこへ玄関のドアセンサーが反応しました。受信機は事務所の机の上にあり、小さな音で鳴っています。
介助をしていた職員が気づいたのは、介助を終えて廊下に出たときでした。玄関に行くと、入居者の方が靴をはこうとしているところでした。何事もなく居室へ戻れましたが、あと少し遅かったら外に出ていたかもしれません。
この場面で足りなかったのは、センサーではありません。センサーはちゃんと反応しています。足りなかったのは、受信機が人のいない場所に置かれていたこと、ひとり目が出られないときにふたり目へ知らせが回る決まりがなかったこと、仮眠中の職員を起こしてよいかの約束がなかったことです。
夜勤のリーダーが似た場面を経験したあと、施設で話し合って受け方を変えた話は、note に詳しく書いています。介護施設の夜間見守り、「気づけない」を減らす工夫
知らせ方で、届く範囲が変わる
夜間の見守りに使われる道具は、何を検知するかより、知らせがどこに届き、受けた人が出られないときにどうなるかで比べると、夜勤の動きに合うかどうかが見えやすくなります。
| 知らせ方 | 鳴る場所 | 受ける人が出られないとき | 合う場面 |
|---|---|---|---|
| ナースコール | ステーション、職員の端末 | 本人が押すのが前提。押さない・押せない場面には届かない | 本人が自分で人を呼べる方 |
| センサー+ステーションの表示・受信機 | 決まった場所 | その場に人がいなければ、鳴ったまま止まる | 職員が近くにいることが多い時間帯 |
| センサー+職員が持ち歩く端末 | 端末を持っている人の手元 | 通知は残るが、気づかなければそのまま | 全員が端末を身につけて動ける施設 |
| センサー+自動の電話 | 登録した電話(施設の外の人も入れられる) | 応答がなければ次の人へかける | 夜勤の人数が少ない、施設の外にも知らせたい |
| 定時の巡回 | 職員が自分の目で見る | ― | 様子を直接確かめる。巡回と巡回のあいだは見えない |
多くの施設は、このどれか一つではなく、いくつかを組み合わせています。ナースコールと巡回はすでにあって、そこにセンサーを足す形がふつうです。
足すときに見てほしいのは右から2列目です。夜勤が2人なら、2人とも手が離せない時間は必ずあります。その時間に知らせがどうなるかを、導入する前に一度、紙の上でたどってみてください。
ドアの開閉、人の動き、ベッドからの起き上がりなど、センサーそのものの種類と選び方は 見守りセンサーの種類と選び方 にまとめています。
受ける順番は、時間帯ごとに紙1枚で
順番は、夜の時間帯ごとに分けて書くと決めやすくなります。休憩や仮眠で人が入れ替わるからです。たとえば夜勤2人と、当番の管理者がいる施設なら、次のような形です。
- 22時〜1時:1番目 夜勤A、2番目 夜勤B、3番目 当番の管理者
- 1時〜3時(Aの休憩):1番目 夜勤B、2番目 夜勤A、3番目 当番の管理者
- 3時〜5時(Bの休憩):1番目 夜勤A、2番目 夜勤B、3番目 当番の管理者
- 5時〜起床:1番目 夜勤A、2番目 夜勤B、3番目 当番の管理者
休憩中の人が2番目に入っているのは、1番目が介助中で出られないときに起こしてよい、という約束です。ここは職員どうしで納得しておかないと、決めても使われません。
3番目に施設の外の人を入れるかどうかは、施設の考え方によります。外の人は駆けつけられないかもしれません。それでも、夜勤者に電話をかけ直して状況を聞く、近くに住む職員に応援を頼む、といった次の手を打てます。夜中に電話を受けることを、その人自身が了承していることが前提です。
もうひとつ、受けた人が「自分が行く」と周りに分かる方法も決めておきます。声をかける、インカムで伝える。自動の電話なら、誰が何時に出たかが記録に残るものもあります。誰が行ったか分からないまま2人とも同じ場所へ向かうと、そのあいだ他の居室が空いてしまいます。
鳴りすぎると、鳴っても行かなくなる
センサーが一晩に何度も鳴ると、職員はだんだん「またか」と思うようになります。これがいちばん怖い。本当に必要なときの知らせが、慣れの中に埋もれてしまいます。
鳴りすぎは、入れる前の条件づけでかなり減らせます。まず、知らせを有効にする時間帯。消灯から起床までにするのか、日中も鳴らすのか。入居者の方の生活のリズムを見て決めます。
次に、ドアが開いたままの時間です。一瞬開いただけでは鳴らさず、決めた時間より長く開いていたら鳴らす。短すぎると風や職員の出入りでも鳴り、長すぎると外へ出たあとで知らせが来ます。最初は短めにして、記録を見ながら延ばしていくほうが安全側です。
同じ場所が続けて反応したときに、しばらく知らせを止める設定もあります。対応中に同じ知らせが何度も鳴ると、ほかの知らせが聞き分けにくくなるからです。職員が出入りする通用口を見守りの対象から外すか、職員が通るときだけ一時的に止める手順を作るかも、ここで決めておきます。
どこまで細かく設定できるかは機器によって違います。入れる前に、導入元に具体的な夜の場面を伝えて、どう設定できるかを聞いておくと話が早いです。
鳴らないことにも、気づけるように
静かな夜が続くと、ほっとします。ただ、それが本当に何もなかったのか、センサーの電池が切れているのか、配線が外れているのか、通信が止まっているのかは、外からは分かりません。
機器の電池切れや通信の途絶えを管理者に知らせる機能があるかは、導入前に確かめておきたいところです。その機能がない機器なら、週に一度、決まった曜日にテストで鳴らして、順番どおりに知らせが届くかを確かめる日を作ります。停電のあとも一度確かめておくと安心です。
まず出入口1か所から始める
夜間の見守りを新しく組み立てるなら、出入口1か所から始めるのが無理のないやり方です。抜け出しや離設は、夜勤の人数が少ない時間ほど気づきにくく、外へ出てしまうと探す範囲が一気に広がるからです。
始めたら1か月ほど、知らせが鳴った時刻、出た人、駆けつけるまでにかかった時間、行ってみてどうだったかを書き留めます。自動で記録が残る機器ならそれを使います。鳴りすぎていないか、順番表のどこで止まりやすいか、ある時間帯に集中していないかが見えてきます。居室や廊下、ベッドの周りへ広げるのは、それを見てからで十分です。
出入口の見直し方と、ドアセンサーをどう組み合わせるかは、note でも取り上げています。介護施設の離設対策、出入口の見直しとドアセンサーの活用
入居者の方やご家族には、何のためにどこへセンサーを付けるのかを説明しておきます。カメラを使わない方法を選べば、居室の中を映さずに済みます。
この記事は一般的な情報です。見守りの道具は職員が気づくきっかけを増やすもので、事故を防ぐことを約束するものではありません。運用の細かな決め方は、施設の方針や入居者の方の状態に合わせて、医師や看護職、ケアマネジャーなどと相談しながら決めてください。
読んで気になったことは、AICA にそのまま聞けます
お名前も連絡先も入力はいりません。声でも文字でも話せます。導入の相談になりそうなら、AICA が担当者につなぎます。
よくある質問
- 夜勤がひとりの時間帯でも、この考え方は使えますか?
- 使えます。夜勤がひとりの時間帯こそ、2番目と3番目を施設の外に置いておく意味があります。オンコールの管理者や近くに住む職員を順番に入れておけば、夜勤者が介助中で出られないときに知らせが外へ回り、電話をかけ直してもらう、応援に来てもらうといった次の手につながります。誰を入れるかは、夜中に電話を受けることを本人が了承しているかも含めて決めてください。
- ナースコールがあれば、センサーはいりませんか?
- 役割が違います。ナースコールは、本人がボタンを押して人を呼ぶための道具です。夜中にひとりで外へ出ようとする場面や、ベッドから起き上がってそのまま歩き出す場面のように、本人が押さない、押せないときには知らせが届きません。センサーはその部分を補うものです。
- センサーが何度も鳴り、職員が疲れてしまいます。
- 有効にする時間帯、ドアが開いたままの時間、同じ場所が続けて反応したときに知らせを止める時間を見直すと、減ることがあります。1週間ほど、鳴った時刻と駆けつけたときの様子を書き留めると、どの条件を変えればよいかが見えてきます。設定で変えられる範囲は機器によって違うので、導入元にも相談してください。
- 見守りセンサーを入れる費用に、補助金は使えますか?
- 介護施設が見守りセンサーなどを入れる費用は、都道府県が行う補助事業の対象になることがあります。対象になる機器や補助の割合、申請の時期は都道府県と年度によって変わるので、施設のある都道府県の担当窓口で確かめてください。





