高齢者の見守り、自治体のサービスと家族の見守りの組み合わせ方離れて暮らす親のために

離れて暮らす親の見守りを考えはじめたとき、最初に頼れるのは、親の住む地域の地域包括支援センターです。自治体の見守りの取り組みや、近所の人、民生委員とのつながりも、まずここで教えてもらえます。
ただ、地域の見守りは「親のことを気にかけてくれる人を増やす」ものです。夜中に起きたことや、毎日のちょっとした変化に、すぐ気づける形にはなっていません。そこは家族の側で用意しておく。地域と家族、それぞれ得意な時間が違うので、重ねて使うと穴が小さくなります。
「役所に頼めば見守ってもらえる」と思っている人もいれば、「役所に頼むほどのことではない」と思っている人もいます。どちらの思い込みも、窓口に一度電話してみるとだいぶほどけます。
まず電話するのは地域包括支援センター
地域包括支援センターは、高齢の人の暮らしや介護についての相談を受ける公的な窓口です。厚生労働省の地域包括ケアシステムのページでは、高齢者の総合相談や権利擁護、介護予防の援助などを行う中核的な機関として、市町村が設置しているものと説明されています。同じページによると、令和7年4月末の時点で全国に5,487か所(支所を含めると7,374か所)あります。
担当のセンターは、親の住所で決まります。親の住む市区町村のホームページで「地域包括支援センター」と調べると、町名ごとの担当が載っていることがほとんどです。家族が遠くに住んでいても相談できます。
電話の前に、次のことをメモしておくと話が早く進みます。
- 親の名前、住所、年齢、一人暮らしかどうか
- 最近気になっていること(電話に出ない日が増えた、冷蔵庫に同じものが並んでいた、など)
- 介護保険の認定を受けているか、かかりつけの病院はどこか
- 家族の連絡先と、平日の昼に電話に出られる時間
「まだ介護が必要というほどではないのですが」と前置きして大丈夫です。介護の手前の段階で相談しておくと、いざというときに「前に電話をくれた娘さんですね」と話がつながります。
自治体の見守りで、頼めること
自治体の高齢者向けの見守りは、地域によって中身がかなり違います。名前も「見守りネットワーク」「安心見守り事業」などさまざまで、同じ名前でも中身が違うこともあります。よく聞くのは次のような取り組みです。
ひとつは、緊急通報の装置の貸し出しです。家の中で具合が悪くなったときに、本人がボタンを押すと、決められた先に連絡が届く仕組みです。対象の年齢や、費用の負担、近くに協力してくれる人の登録が必要かどうかは、自治体ごとに決まっています。
食事を届けるサービスに、安否の確認を兼ねているものもあります。届けた人が本人の様子を見て、応答がないときに連絡してくれる、という形です。
それから、新聞や郵便、電気やガスなど、ふだん家を回る事業者と自治体が協定を結び、「新聞がたまっている」「何日も明かりがつかない」といった異変に気づいたら知らせてもらう取り組みもあります。家族が申し込むものではありませんが、こういう網が地域にあることは知っておいて損はありません。
どれが親の地域で使えるかは、地域包括支援センターか、自治体の高齢者福祉の窓口で聞くのがいちばん確実です。
民生委員と、ご近所のゆるやかな見守り
民生委員は、厚生労働省の民生委員・児童委員のページによると、厚生労働大臣から委嘱され、地域で住民の立場に立って相談に応じ、必要な援助を行う人たちです。一人暮らしの高齢の人の家を訪ねたり、困りごとを行政や地域包括支援センターにつないだりしています。
担当の民生委員が誰かは、自治体の窓口や地域包括支援センターで教えてもらえます。家族から「父が一人暮らしになったので、気にかけてもらえるとありがたいです」と一言伝えておくだけでも違います。
ご近所の人に頼むときは、頼む中身を小さくしておきます。たとえば隣の家の人に「雨戸が昼になっても閉まったままだったら、この番号に電話をもらえますか」とだけお願いする。毎日見に行ってほしい、と頼むと相手の負担になります。目に入ったときだけ、くらいが長続きします。
地域の見守りが届きにくい時間
地域の見守りには、得意な時間と苦手な時間があります。
訪問や配食は、日中の決まった時間です。民生委員の訪問も、毎日ではありません。新聞や郵便の異変で気づくのは、何日か続いたあとになります。地域の見守りは、人の目で、間をおいて気づく仕組みなんですよね。
緊急通報の装置は、本人がボタンを押せることが前提です。転んで手が届かない、意識がもうろうとしている、ボタンの存在を忘れている。そういうときには使えません。首から下げる形のものでも、お風呂やトイレ、寝ているあいだは外していることがあります。
正直なところ、家族がいちばん心配するのは夜中と早朝です。トイレに起きたときに転んだ、夜中に玄関から外に出てしまった、朝になっても起きてこない。こうした時間は、地域の人の目がいちばん少ない時間でもあります。
ここを家族の側でどう埋めるか、です。毎日の電話はひとつの方法ですが、親が出なかったときに何が起きているのかは分かりません。家に置いたセンサーが動きや扉の開け閉めに気づいて、家族に知らせる仕組みなら、親が何も操作しなくても、夜中や早朝の異変を知るきっかけになります。知らせを電話で受けるかアプリで受けるかの違いは、親の見守り、電話で知らせる方法とアプリ通知の違いにまとめています。
読んで気になったことは、AICA にそのまま聞けます
お名前も連絡先も入力はいりません。声でも文字でも話せます。導入の相談になりそうなら、AICA が担当者につなぎます。
地域と家族、重ねるとたとえばこうなる
ある家族の例です。父が80代で一人暮らし。息子は新幹線で3時間の距離に住んでいます。
最初にしたのは、父の住む町の地域包括支援センターへの電話でした。父の様子を伝え、自治体の緊急通報の装置と、配食の見守りがあることを教えてもらいました。父は配食は断りましたが、緊急通報の装置は「置いておくだけなら」と受け入れました。担当の民生委員にも、センターから父のことを伝えてもらっています。
そのうえで、夜中と早朝は家族の側で見ることにしました。寝室とトイレの前、玄関にセンサーを置き、夜中に玄関の扉が開いたときと、朝のいつもの時間を過ぎても動きがないときに、息子の電話が鳴るようにしました。息子が出なければ、近くに住む父の妹へ回ります。
鳴ったときに息子がすることも決めました。まず父の携帯と家の電話にかける。出なければ叔母に見に行ってもらう。叔母もつかまらないときに相談する先として、地域包括支援センターの番号を、家族のスマホに「父の地域包括」という名前で登録してあります。
毎日の安否確認の電話はやめて、日曜の夕方にゆっくり話す日にしました。用件のない電話のほうが、父も気楽に話せます。
地域の見守りは「誰かが気にかけている」状態を作ります。家族の見守りは「異変に早く気づく」ところを受け持つ。この家族は、そう分けて考えたことで、どちらに何を期待するかがはっきりしました。
離れて暮らす家族が最初の一歩で何をしたかは、note の 遠距離介護で家族ができること、はじめの一歩 に、地域包括支援センターに電話したときの話も含めて書いています。年末に帰省するなら、親の一人暮らしの見守り、年末の帰省で確認したいチェックリスト も合わせてどうぞ。
この記事は一般的な情報です。自治体の見守りの取り組みの内容や対象、費用は地域によって違います。親の地域で使える制度や、心身の状態に合う見守りの方法は、地域包括支援センターやケアマネジャー、お住まいの自治体に確認してください。どの見守りも事故や病気を防ぐものではなく、気づくきっかけを増やすためのものです。
よくある質問
- 地域包括支援センターには、家族が遠くに住んでいても相談できますか?
- できます。担当のセンターは家族の住所ではなく、親の住所で決まります。親の住む市区町村のホームページで担当のセンターを調べ、電話で相談してください。
- 自治体の見守りサービスは、どこに申し込めばいいですか?
- 自治体によって窓口が違います。高齢者福祉の担当課が受け付けていることが多いですが、地域包括支援センターに聞けば、その地域で使える取り組みと申し込み先を教えてもらえます。対象の年齢や費用、協力してくれる人の登録が必要かどうかも、そのときに確かめてください。
- 親が「役所の世話にはなりたくない」と言います。
- 見守りの話は、本人のためというより「家族が安心したいから」と伝えたほうが受け入れてもらいやすいことがあります。まずは家族だけで地域包括支援センターに相談しておき、本人には使えそうなものだけを話す、という順番でもかまいません。
- 自治体の緊急通報の装置があれば、家族の見守りはいりませんか?
- 緊急通報の装置は、本人がボタンを押せるときに役立つものです。転んで動けないときや、夜中に寝ているあいだの異変、本人が気づいていない変化には届きにくいので、家族の側でも気づける仕組みを用意しておくと安心です。どこまで必要かは、親の暮らし方に合わせて家族で決めてください。





