冬の実家の見守り離れて暮らす親の入浴と寒さ、家族が先に決めておくこと

冬に離れて暮らす親のことで心配が増えるのは、お風呂と、寒い夜中と、朝です。電話で「寒いから気をつけてね」と言っても、何に気をつければいいのかは、親の側もはっきりしません。
家族ができるのは、気をつけ方を具体的にして、親と一緒に決めておくことです。お風呂に入る時間帯、入る前と出たあとの知らせ方、電話に出なかったときに誰が何をするか。これを寒くなる前、遅くとも年末の帰省のときに話しておくと、冬のあいだの心配の大きさがかなり変わります。
ここでは、消費者庁の呼びかけを手がかりに、離れて暮らす家族が冬の前に決めておきたいことを順番に書きます。体調や病気についての判断は、かかりつけ医に相談してください。
冬に増えるのは、お風呂の事故
消費者庁のコラム(2024年12月)によると、令和5年に「不慮の溺死及び溺水」で亡くなった65歳以上の人は8,270人でした。同じ年に交通事故で亡くなった高齢者は2,116人です。
8,270人のうち、浴槽での事故で亡くなったのは6,541人で、そのうち家や居住施設の浴槽が6,073人。溺水で亡くなった高齢者の約8割が、入浴中だったことになります。月別に見ると、12月と1月が多くなっています。
消費者庁は原因として、暖かい部屋と寒い脱衣所や浴室との温度差による血圧の急な変化や、熱いお湯に長くつかって体温が上がることによる意識障害を挙げています。
数字だけを伝えると、親は怖がるか、「うちは大丈夫」と聞き流すかのどちらかになりがちです。伝えるなら、次の節のような「やること」と一緒にしたほうが受け取ってもらえます。
入浴の前と後に、決めておくこと
消費者庁は、入浴の前と入浴中の目安として次のことを挙げています。
- 前もって脱衣所や浴室を暖めておく。部屋ごとの温度差は温度計で見えるようにする
- 入る前に水分をとる。食後すぐ、お酒を飲んだあと、薬を飲んだあとの入浴は避ける
- お湯は41度以下、つかる時間は10分までを目安にする。浴槽から急に立ち上がらない
- 同居の人がいれば、入る前に一声かけ、入浴中はこまめに声をかける
一人暮らしの親だと、最後の「一声かける」相手がいません。ここを家族で補うやり方を考えます。
いちばん手軽なのは、入る前と出たあとに、家族に短いメッセージを送ってもらうことです。スタンプ一つでかまいません。ただ、毎日のことなので、親が面倒になって続かないことも多い。続かなかったときに親を責めない、という約束も一緒にしておくと気が楽です。
入る時間帯を決めておくのも効きます。夜遅く、体が冷えきってから入るより、夕方の明るいうちに入る人もいます。家族の側も「いつもこの時間に入っている」と分かっていれば、その時間に電話をかけて出なくても、慌てずにすみます。
お湯の温度は、給湯器の設定で41度以下にしておけます。帰省したときに、設定を一緒に見ておくとよいと思います。
ヒートショックについて、実家の中で気をつけたい場所と家族ができる備えは、note の ヒートショック対策、高齢の親の実家で気をつけたい場所と家族ができる備え にもまとめています。
寒さは、温度計で見えるようにする
冬の実家は、居間だけが暖かくて、廊下やトイレ、脱衣所が冷えていることがよくあります。親は慣れているので、寒いと感じていないこともある。
消費者庁が温度計で「見える化」を勧めているのは、このためです。居間、寝室、トイレ、脱衣所に一つずつ置いておくと、どこが冷えているかが親にも分かります。最近は、室温をスマホで見られる温度計もあります。家族が離れたところから室温を見られると、「今日は寝室が冷えているから、暖房をつけて寝てね」と具体的に言えます。
暖房をつけるかどうかは、電気代を気にして親が控えていることもあります。何度になったらつける、という目安を一緒に決めておくと、家族が毎回言わなくてすみます。
実家の寒さと暖房の考え方は、note の 高齢者の冬の室温、実家の寒さ対策と暖房の考え方 でも書いています。
電話に出ないときの順番
冬は、夜中のトイレや、朝起きたときの寒さが気になります。いつもの時間に電話をかけて出ないと、家族は一気に不安になります。
そのときに慌てないよう、順番を先に決めておきます。
- 何分あけて、もう一度かけるか(携帯と家の電話の両方に)
- それでも出なければ、近くに住む誰に見に行ってもらうか
- その人もつかまらないとき、どこに相談するか(親の住む地域の地域包括支援センターなど)
- 家に入るための鍵を、誰が持っているか
鍵は見落としがちです。見に行ってくれる人がいても、家に入れなければ様子が分かりません。合鍵を近くの親せきに預けるか、預ける先がないなら、どうするかを親と話しておきます。
順番は、家族のグループに文章で残しておくと、いざというときに誰が見ても同じ動きができます。親が電話に出ないときの考え方は、note の 親が電話に出ないと心配…慌てないために家族で決めておくこと に詳しく書いています。
読んで気になったことは、AICA にそのまま聞けます
お名前も連絡先も入力はいりません。声でも文字でも話せます。導入の相談になりそうなら、AICA が担当者につなぎます。
年末の帰省で、見ておきたいところ
年末年始の帰省は、冬の実家を自分の目で見られる貴重な機会です。見ておきたいのは、次のようなところです。
脱衣所と浴室に、暖房や温度計があるか。給湯器の温度の設定。寝室からトイレまでの廊下の明かりと寒さ。電話機やスマホが、寝室や居間の聞こえるところに置いてあるか。
それから、上で書いた「入浴の知らせ方」と「電話に出ないときの順番」を、親と一緒に決める時間を少し取ってください。顔を合わせて話すと、電話よりずっと話が進みます。帰省のときに決めておきたい連絡のルールは、note の 帰省のときに親と決めておきたい「連絡のルール」 にもまとめています。
見守りの仕組みを足すなら
電話やメッセージは、親が出られる、送れるときにしか役に立ちません。お風呂で動けなくなったときや、夜中に倒れたときには届きません。
そこを補うのが、家の中のセンサーで「いつもと違う」に気づく見守りです。たとえば、脱衣所の扉が閉まったまま長い時間たった、朝のいつもの時間を過ぎても寝室から動きがない、といったときに家族へ知らせる使い方があります。何分で知らせるか、誰に知らせるかは、親の暮らし方に合わせて決めます。
選ぶときは、知らせが家族に届いたあと、誰がどう動くかまで決めておけるかを見てください。スマホのアプリに通知が来るだけだと、仕事中や寝ているときに気づけないことがあります。電話で鳴らすか、通知だけか、何人に順番に知らせるか。上で決めた「電話に出ないときの順番」と、同じ形にできるものが使いやすいと思います。
この記事は一般的な情報です。入浴や室温について、親の体調に合った注意点は、かかりつけ医に相談してください。見守りは事故を防ぐものではなく、早く気づくきっかけを増やすためのものです。
よくある質問
- 一人暮らしの親のお風呂、何分出てこなかったら心配すればいいですか?
- 決まった答えはありません。消費者庁は、お湯につかる時間を10分までにするよう呼びかけていますが、体を洗う時間も含めた入浴の長さは人によって違います。親のふだんの入浴の時間を一度聞いておき、それより大きく長いときに連絡する、と家族で決めておくのが現実的です。
- 毎日の電話が、親にも自分にも負担になってきました。
- 毎日の安否確認は、電話でなくてもかまいません。朝のメッセージやスタンプ、決まった時間の連絡だけにして、ゆっくり話す電話は週に一度にする、という家族もいます。親も家族も無理なく続けられる形を選んでください。
- 親が「寒いのは平気」と言って暖房をつけません。
- 本人が寒さを感じにくくなっていることもあります。温度計を置いて、数字で一緒に見るほうが話が進みやすいです。何度になったら暖房をつける、と目安を決めておくと、家族が毎回言わずにすみます。
- 見守りの機械を入れることを、親が嫌がります。
- 「見張られている」と感じる親は少なくありません。カメラを使わない見守りもあること、家族が安心したいから、という伝え方をすると受け入れてもらいやすいことがあります。note の 親が見守りを嫌がるとき、どう話す? も参考にしてください。
- 消費者庁「コラムVol.12 高齢者の事故 ―冬の入浴中の溺水や食物での窒息に注意―」(2024年12月19日。厚生労働省「人口動態調査」をもとに消費者庁が作成)消費者庁のページ





